英語学習に、シャドーイングが良いというのはよく聴く話ですよね。
一方で、シャドーイングについては、以下のようなことが言われることもあります。
- 上級者向けの方法なので、初心者には効果が低い
- スクリプトを読みながらだと、耳に意識が向きにくいので効果が低い
- 聴き取れない音が多い状態だと、自分で音を再現できないので効果が低い
確かに、難易度の高い教材を使っている場合や、「耳から聞いて繰り返す」方法だけで行う場合は、ビギナーや中級者にとって効果が出にくい面はあると思います。
でも、実は、シャドーイングは音にしっかりアプローチできる方法としてはレベルを問わず効果が高く、自分のレベルにあったやり方さえすれば、どのレベルの学習者でも、シャドーイングを取り入れることで英語学習の効果を高めることは可能です。
そこで、今回は、シャドーイングによって得られる効果を英語学習者のレベル別にご紹介したいと思います。
この記事はこんな方におすすめ:
- シャドーイングってどんな効果があるの?
- 初心者がシャドーイングやると意味ないって本当?
こんな人が書いてます
ルー
- 英語好きが高じて、留学なしで高校で英検1級を取得
- 英語で仕事して10年以上
目次
英語学習にシャドーイングを取り入れることで得られる6つの効果
まずは、英語学習にシャドーイングを取り入れることによって得られる効果をご説明していきます。
なお、「取り入れる」という表現にしているのは、特にビギナーの場合、スクリプトを読解する学習も並行して行うことを想定しているため、厳密に「シャドーイング」そのもの効果とは言えないものも含まれるためです。
シャドーイングを取り入れた学習によって得られる効果は、主に以下の6つです。
- 1: 耳に意識を集中して聴く力がつく
- 2:身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる
- 3: イメージと英語を直接結びつける練習になる
- 4: 自分で使える英語表現の幅が増える
- 5: スクリプトを読みながら行うことで、文字と音が一致する
- 6: スクリプトを使って単語を調べることで、音や文脈の知識とともに単語をインプットできる
以下順番にご説明していきます。
1: 耳に意識を集中して聴く力がつく
まず、シャドーイングはアウトプット専用の練習のように思われがちですが、実は、耳に意識を集中して聴く力がつくことでリスニング力が高まるという効果があります。
耳で聴き取れない音はリピートできないので、「自分でも繰り返す」ことを前提として聴くと、自然と細かい音まで集中して聴こうとするからです。
また、自分自身で繰り返してみることによって、お手本で聞こえた音と、自分の発音やイントネーションがずれていることに気付きやすく、細かい音の違いに敏感になるので、その意味でもリスニング力がアップしやすい方法になります。
ルー
2: 身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる
また、シャドーイングは、舌や口の筋肉などの身体記憶にアプローチしながら、英語特有のリズムやイントネーション、発音などを練習できる方法でもあります。
お手本の後について、すぐに自分でも繰り返すというのが、シャドーイングの特徴です。
ですので、音の流れを止めないままで一定の時間にわたって模倣し続けることで、英語独特のリズムやイントネーションの流れ、口の筋肉の動き方などを、集中的に、身体的な感覚として練習できることになります。
これは、お手本の音声から少し時間をおいて繰り返すリピーティングや、お手本を聞かずに行う音読などでは得にくい、シャドーイングならではの効果です。
3: イメージと英語を直接結びつける練習になる
さらに、シャドーイングは、聴いた音を間髪入れずに繰り返すことになるので、「日本語でどういう意味か」と言った、日本語の思考が入ってくる隙間がありません。
その意味で、頭の中のイメージと英語(の音)を直接結びつける練習にもなります。
ただ、この効果を得るためには、漠然と口で音を再現するだけでは効果はなく、聴いた文章(口で繰り返している文章)について、「ぼんやりとでも意味を思い浮かべながら口で繰り返す」ことが大切になります。
ルー
4: 自分で使える英語表現の幅が増える
また、耳で聞きながら、意味を思い浮かべつつ、その場で自分の口で繰り返すことをしていると、その過程で、「あ〜、これはこういう言い方するんだ!」という発見が多くなります。
通常のインプットだと、インプットして、そのままということになりがちです。
一方、シャドーイングの場合は、その場で自分の口でも繰り返す練習をすることになるので、その分、自分で使える英語表現として頭に残りやすい方法になります。
5: スクリプトを読みながら行うことで、文字と音が一致する
さらに、スクリプトを見ながらシャドーイングをすると、文字と正しい音の対応を理解しやすいという効果もあります。
外国語習得では、基礎的な知識として、文字と正確な音とがきちんと結びついていることがとても大切です。
この点、スクリプトを読みながらシャドーイングをする方法は、「聴きながら読む」にプラスして「自分の口でも繰り返す」ステップがあることで、音のつながりや脱落にも気付きやすくなり、単語がどこで切れるかなども含めて、文字と正確な音を対応させやすい方法になります。
6: スクリプトを使って単語を調べることで、音や文脈の知識とともに単語をインプットできる
最後に、特にビギナーレベルの学習では、「シャドーイングのスクリプトを使って単語を調べる」学習を組み合わせることによって、単語の音や文脈の知識と一緒に、単語をインプットできるという効果が得られます。
外国語習得では、単語を覚えるときに、きちんと文字と音を一致させ、どのような文脈で使われるかを理解できると、効率的に単語をインプットすることができます。
その意味で、シャドーイングのスクリプトを使った単語学習は、単語をインプットする方法としても効果的な方法になります。
各レベルのシャドーイング方法と、得られる効果
それでは、以上6つの効果を踏まえて、各学習レベルのシャドーイング方法で得られる効果をご説明していきます。
なお、以下で書いているのは、各レベルのシャドーイングのやり方の骨子だけです。
各学習レベルの詳しいシャドーイングのやり方とおすすめ教材は、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてチェックしてみてくださいね!
【英語のシャドーイングのやり方】学習歴20年がレベル別に紹介
1: ビギナー
まず、ビギナーレベルにおすすめなシャドーイング方法と、各ステップで得られる効果は以下のとおりです。
- 1: スクリプトを読みながら5分程度シャドーイングをする
→耳に意識を集中して聴く力がつく
→文字と、正しい音を一致させられる
→身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる - 2: シャドーイングのスクリプトを使って、わからない単語を調べる
→音や文脈の知識とともに単語をインプットできる - 3: 意味をざっくり理解した後にもう一度、スクリプトを読みながらシャドーイングをする
→耳に意識を集中して聴く力がつく
→文字と、正しい音を一致させられる
→身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる
→イメージと英語を直接結びつける練習ができる
以上のように、ビギナーの場合でも、スクリプトを読みながらシャドーイングをすること、スクリプトを使って単語を調べ、単語や構文を理解する時間をとることで、「音」や「単語」といった、英語学習に大切なポイントに、一気通貫でアプローチすることができます。
ポイントは、単語を調べるのが苦にならない程度の簡単な教材を使うことです。
ルー
2: 中級者
次に、中級者レベルにおすすめなシャドーイングのやり方と、各ステップで得られる効果は以下のとおりです。
- 1: まずは、スクリプトを読まずに10分程度シャドーイングする
→耳に意識を集中して聴く力がつく
→身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる
→イメージと英語を直接結びつける練習ができる - 2: スクリプトを読みながら、もう一度シャドーイングする
→耳に意識を集中して聴く力がつく
→身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる
→イメージと英語を直接結びつける練習ができる
→文字と、正しい音を一致させられる
→音や文脈の知識とともに単語をインプットできる
中級以降の方は、もうすでに、ある程度は音と文字を結びつけることができていて、逆に自分の頭の中に自分なりの発音が出来上がってしまっている方も多いと思います。
そのような場合、最初からスクリプトを目で追ってしまうと、逆に耳に意識が向かないというデメリットにもなり得ます。
ですので、スクリプトなしでもシャドーイングができるレベルの教材を選び、まずはスクリプトを見ないようにすることで、耳に意識を最大限向けた状態でシャドーイングを行います。
その後、今度はスクリプトを読みながら、もう一度シャドーイングをすることによって、耳だけでは聴き取れなかった音を文字と一致させられる効果や、新しい単語をインプットできる効果も得ることができます。
3: 上級者
最後に、上級者の場合は、以下のとおり、スクリプトを読まずに、多少長めの時間シャドーイングを行うだけの形になります。
- スクリプトを読まずに20分程度シャドーイングする
→耳に意識を集中して聴く力がつく
→舌や口の筋肉など身体記憶にアプローチできる
→自分で使える英語表現の幅が増える
上級者は、ビギナーレベルや中級者レベルと比べると、「英語表現をインプットしながら、その場で練習することで、自分で使える英語表現の幅が増える」という実践的な側面の効果を、より多く得られるようになります。
ルー
以上、各学習レベルのシャドーイング方法に対応する形で、ステップごとに得られる効果をご紹介しました。
以上により、冒頭で触れた「シャドーイングに関してよく言われること」については、以下のような形で対応することになります。
- 上級者向けの方法なので、初心者には効果が低い
→耳で聞いて繰り返すだけでなく、レベルに合ったやり方をプラスする
(ビギナーは、スクリプトを読解する時間をとるなど) - スクリプトを読みながらだと、耳に意識が向きにくいので効果が低い
→ビギナーは、文字と音を一致させながら音に慣れることを優先する
→中級レベルは、スクリプト無しに挑戦しながら、スクリプトを補助的に使う
→上級レベルはスクリプトを使わない - 聴き取れない音が多い状態だと、自分で音を再現できないので効果が低い
→ビギナーから中級レベルは、文字と音を対応させることを優先しつつ、徐々にリスニング力を上げていく
このように、自分のレベルにあったやり方を選びさえすれば、どのレベルの学習者も、「音」にしっかりアプローチできるというシャドーイングのメリットを活かして、学習効果を高めることが可能になります。
まとめ:英語学習にシャドーイングの効果を取り入れよう!
以上、今回は、英語学習にシャドーイングを取り入れることによって得られる効果を、学習レベル別にご紹介しました。
ご紹介のとおり、シャドーイングを取り入れた学習には、主に以下の効果があります。
- 1: 耳に意識を集中して聴く力がつく
- 2:身体記憶に残る方法で、英語のリズムや発音を練習できる
- 3: イメージと英語を直接結びつける練習になる
- 4: 自分で使える英語表現の幅が増える
- 5: スクリプトを読みながら行うことで、文字と音が一致する
- 6: スクリプトを使って単語を調べることで、音や文脈の知識とともに単語をインプットできる
また、自分のレベルに合ったやり方をすれば、どのレベルでも、学習効果を得ることが可能です。
ぜひ、「上級者向けだから」と敬遠せず、シャドーイングを積極的に取り入れていきましょう!
最後に、具体的なやり方とおすすめ教材をご紹介している記事を、もう一度置いておきます。「自分でもシャドーイングをやってみようかな」と思った方は、ぜひあわせてチェックしてみてくださいね!
【英語のシャドーイングのやり方】学習歴20年がレベル別に紹介
それでは今回はこのあたりで。最後までお読みいただきありがとうございました。